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佐藤純の賭博回遊業 未来を手にした男(後編)

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オープンゲームのとんでもない強運で1250ドルを手に入れた知人だが、これは奇跡の一部に過ぎない。この後の展開でこの男の人生が大きく変わろうとは俺にも彼自身にも到底予想は出来ていなかった。

一風変わったオープンゲームが終了し、本格的にゲームがスタートする。本番でも彼は強気だ、俺が20ドルベットに対し、100ドルを賭ける。

「何か根拠有るの?」

「無い。でも先ほど無い金を貰ったので、気持ち的に楽に張れるのよ」

と笑顔をみせた。強気な人間ほど怖いものは無い。知人は驚くほど簡単に勝ちを重ねていく。余裕からか勘が冴え渡っている。本番が始まってから5勝4敗の俺に対して、7勝2敗と好成績。しかも2敗の賭け金は何故か30ドルと低額の賭けだった。

「何か賭ける根拠でもあるのか?」

「流れが手に取るように判るのよね」

再度同じ質問を投げかけたのだが、冗談なのか本気なのか、なんとも言えない回答だ。上るものに逆らう意味は無いし実績もある。彼の言葉を信じ、トコトン乗る事にした。知人が小さく張るときは、俺は『見』。程々に張っている時は50ドル程度。そして、大きく張った時は100ドルを賭けるとルールを作る。

そう決めた途端、知人は1000ドルをバンカーに置きやがった!仕方なく俺も100ドルをバンカーに。結果はすんなりバンカーが勝利。知人と人目も憚らずハイタッチをする。

調子に乗った彼は、バンカーに倍額ベットをする。もちろん俺も追従した。これが契機に9連荘!見る見るうちに彼の手元にはチップの山が出来ていた。山が崩れるといけないと、ピットボスからチップホルダーが手渡される始末だった。

その後も勝ち数を順調に増やし、最終的な今回のシューの結果は俺が40万円、知人は300万円の勝利で終わった。行く前にあれほど心配していた知人が、これほど大胆に勝つとは予想だにしなかった。所謂ビギナーズラックというやつかもしれないが、彼の強運には舌を巻くほかない。

次のシューが用意されるまでの間、フルーツとタバコのサービスを依頼する。しばらく待つと、キャバクラで出て来るようなフルーツ盛りが登場。知人とパクつきながら次のゲームが開始されるのを待つ。待っている間に、余り目立つのも良くないので次のゲームは控えめにしておいたほうが無難かもしれないと忠告しておいた。

そんな話をしている間にラッシャーにコロコロがかけ終わり、第2シューが開始された。最初は様子見でお互いに賭けを見送り、3回目からスタートだ。

ゲームの進行を見守っていると、突然、知人が怖い事を言い出した。

「中のカードの柄が見える気がする。バンカーが4点で勝つような気がする」

・・・まぁ気のせいだろうが、ここまでの実績を考えると馬鹿にはできない。何せ本日の彼の勝率は8割に迫る勢いなのだ。今日は彼の勘を頼りにしても問題ないだろう。そんな俺の目論見どおり、回を重ねるごとにチップの山が大きくなってきた。周りの賭人達も知人を「エンジェル」なんて呼び始めている。信じるものは救われるのだ。

当然負ける時も有ったが、ほぼミニマムベットで切り抜けている。第2シューが終わってみると、俺は200万円のプラス、知人は1000万のプラスに成っていた。見た目はただのおじさんだが、その中身は賭神なのかもしれない。

目立つつもりはなかったのだが、これだけの大勝だ。良い意味でも悪い意味でも目立ってしまっている。最低2シューの条件もクリアしたので、ここでアウトする事にした。

店を出ると同時に、勝利金を狙ったチンピラに襲われた・・なんてこともなく、無事に帰りのタクシーを拾うことに成功。道すがら、金の使い道について話したのだが、競艇で膨らんだ借金の返済に充てるとのことだった。どうやら真っ当な人間を目指すらしく、ギャンブルに賭けるお金も減らしていく方針らしい。

「カジノはやらないのか?」

「こんなに勝たせて貰って完全に辞めるのは無理だけど、日本ではやらないよ。今度からは国外だな」

彼の顔を見たのはこれが最後だった。タクシーでの会話以来、職場から彼の姿が完全に消えたのだ!

携帯番号は知っていたので連絡をとると、会社を退職して今では親の会社経営を手伝っているとの事だった。外部で働くより、生業を盛り上げたほうが、将来の自分の為にも成るのだと。

この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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